帰ってきた宇治五郎、動かない日比谷線

長い沈黙を破り、宇治五郎は戻ってきた。
この間、経験してきた数多くの出来事を簡単に語り切ることは出来ない。

まさか、会社と家の往復だけだった訳ではない。色々とあったのだ。色々と。

特にここ最近は完全にモチベーションを失っていた。落ち込むこともあった。でも今日ここに宇治五郎は復活した。

今朝、日比谷線に乗った時の話だ。
乗った瞬間に、運悪く、1本前を行く電車が仲御徒町でドア故障の為止まってしまった。
「仕事始めから運が悪いな」と宇治五郎。隣の女性が不安げな顔で僕をみる。
放送に耳を傾けていると、どうやら前を行く電車は修理が不可能ということで乗客を全員下ろして、回送電車になるらしい。

と言うことはその後を行く宇治五郎が乗車している電車は次の仲御徒町駅についた瞬間、1台分の乗客がわっと乗ってくることになる。

「このくそコロナの時期に密どころの騒ぎじゃないぜ」と思ったのは僕だけではなかった筈だが、口に出したのは僕だけだった筈だ。怪しげな表情で僕の顔を見る禿げたおじさんが横目に入る。

僕は3分待つことにした。3分待っても動かなければ振替輸送を利用しよう。

3分経ったが動かない。僕は振替輸送を利用する為に人をかき分けて電車を降車した。難しい判断だったが悪くない。

改札にたどり着くと僕の前に中年の茶髪のおじさんが駅員にブチギレていた。こっちは改札を通りたいだけだからとっととどいて欲しかったし、イライラするのは分かるが品もなく切れるもんでないぞ。と思ったら、こっちを向いて急に「お兄さんも迷惑被ってるよな?なんだこのくそ電車。いつ動くのかはっきりしてもらいたいよな?」と駅員さんへのクレームに僕を巻き込んできた。

信じられない表情で彼を見る僕。
勝手に巻き込まれるのも嫌だからシカトしたら、「もしもーし。シカトですかー?」と今度はこっちに喧嘩をうってくるもんだ。

こんな人が世の中にいるもんだなと思ったが、きっと同じことを僕も思われているのかもしれないと思いながら振替輸送に向かっていた、朝8時の話。