外気温37度也。ブレンドM頼む也。

元住吉LIFE

ブレンドMで。

え、ホットですか?

はい。ホットのブレンド、Mサイズで。楽天ペイ。

は?ホット?バカなの?こいつはこの暑さで気でも狂ったのか。言外に彼女がそう思っていることは、表情を見れば一目瞭然だった。

「急いでくれ。頼む。ブレンドMだ。俺には時間が無い(電話会議が始まってしまう。俺がモデレーターだ)」

俺の焦りが伝わったか。その瞬間、彼女は察したようだった。
「ブレンドMね。マシンの上から二つ目のボタン、下から六つ目のボタンを同時に押して。パスワードはF,M,C,K,Iよ」

「わかった。恩にきる」

そんな妄想が、淀みなく脳内に浮かぶ。俺は頭がおかしいのか?そんなことは全くない。
こんな類のしょうもない妄想が頭の中に浮かぶ様になったのは、中学生活も半ばを過ぎた頃からだっただろうか。
(小学生まではリザードンになる妄想ばかりしていたが、中学生くらいから、リアル?な妄想に進化した)
それ以来この症状は続いており、世間では中二病と呼ぶらしいと気づいたのは、社会人になってからだった。

時間と勝負をしながらも、無事に俺は、マシンでコーヒーを注ぎ、クリームを2つ入れて家路についた。

なぜ、こんな炎天下でホットコーヒーなのかと疑問に思う方もいるだろう。真面目に答えると、単にリフレッシュだ。落ち着きたいのだ。切り替えたいのだ。落ち着きたい時は温かい飲み物を飲むに限る。
それにこの炎天下でホットコーヒーを飲む訳では無い。クーラーの効いた自宅でゆっくり飲むのだ。温かくて全く問題無い。

なのに、ファミマのバイトさんたちときたら、いつも「ホットですか?」と聞いてくる。真夏の平日の昼下がりに、海パン、草履姿でホットコーヒーを頼みにくる男の神経を疑いたくなる気持ちも分からんでも無い。

でも俺はホットコーヒーが飲みたいのだ。ホットコーヒーが好きなのだ。外は真夏だけど、室内のクーラーで体が冷えてたりするのだ。

ゆっくりとコーヒーを部屋で飲み、だいぶリフレッシュが出来きたところで、無事ミーティングが始まった。

そういえば、昔友達に、コーヒーを飲み過ぎると口が臭くなってキスなんか出来たもんじゃないと教えてもらったことがある気がする。そんな昔話を頭の片隅に入れつつ、ミーティングを片耳で聞き取りながら、部屋の窓の外に目をやると、向かいのマンションの狭い屋上をランニングしているおっさんがいた。

40度だぜ?狂ってやがる。どいつもこいつも。