伊藤忠が出資したムスカと言う会社を知っていますか? #PJ5文字/85日目

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突然ですが、「ムスカ」と言う会社を知っていますか?
先週日経新聞に大手商社の伊藤忠商事が、昆虫テクノロジー企業に出資したと言う記事が載っていました。

昆虫テクノロジー企業(とは何)?
総合商社が(プラントとか穀物とか大きなビジネスじゃなさそうだけど)?
と、個人的に興味がそそられたので調べてみることにしました。

ムスカとは

伊藤忠商事の公式ホームページには「昆虫テクノロジー企業」と紹介されていましたが、中々聞きなれない言葉ですよね。
会社のホームページを調べて見ました。

シンプルだけど結構オシャレで、「テクノロジー感」は出ていますね。福岡の非公開会社の様です。資本金も5,000万円弱程度とまだまだ中小企業です。

ムスカのビジネスは一言で言えば、「オーガニックな肥料・飼料の製造会社」です。地球環境に優しく、製品としての質も非常に高い(であろう)肥料・飼料を作っている会社です。

ビジネス自体に真新しさは無いですが、ここで鍵になるのが「イエバエ」です。

閲覧注意!!
って写真の下に載せても意味ないですね。

 

イエバエ、かわいいい!
と思った方は今すぐムスカに履歴書を送るべきかと思いますが、大抵の方は気持ち悪く感じたのではないでしょうか?僕は昆虫は好きですが、イエバエは特に好きじゃ有りません。

ムスカの肥料・飼料の鍵を握るのはイエバエ。どんなビジネスモデルなのか。下の図をご覧下さい。

(出典:株式会社ムスカ/ホームページ)

全ては豚や牛など(畜産物)の排泄物から初まります。その後、


排泄物をムスカのイエバエの幼生が分解→肥料
排泄物を食べたムスカのイエバエ(幼生から成虫へ)→飼料


肥料は野菜や果物の堆肥に、飼料は養殖用の魚の餌になります。


ムスカの肥料・飼料で生産された魚や農作物の残り(人間様に商品化されたものの余り物)が、豚や牛などが食べます。


豚や牛の糞がムスカのイエバエの餌になります。

以上です。
とてもシンプルですよね。

究極のエコサイクルを実現しています。
イエバエ版ピタゴラスイッチと言えるかもしれません。会社が公式にこの仕組みをYoutubeで解説しています。イエバエの幼生がかわいく表現されているので、是非見てみて下さい。


仕組みが簡単過ぎて、僕も今からイエバエを死ぬ程集めてくれば同じビジネスを始められるのではないかと思いましたが、そうも簡単な話ではない様です。

なんでも、このイエバエは45年間以上1,100世代に渡って、優秀なイエバエ同士を交配させ続けて生まれた言わばイエバエ界のディープインパクトです。

想像してみて下さい、ディープインパクト同士を45年間1100世代も掛け合わせて生まれてくるサラブレッドを。


しかもムスカのディープインパクトはハエです。繁殖力と成長力の塊です。ムスカはディープインパクトを何万も何百万匹も所有している会社なのです。

正直なところ、このディープインパクトの能力は未知数です。
会社のホームページ(採用ページ/2019年4月27日現在)にも、「ムスカは、現在事業化に向けた実証実験・事業開発段階であり、……….」と書いてあります。イエバエの能力がピカイチだったとしても、ムスカの製品を採用する企業が増えるかも未知数です。

ただ、大手総合商社の伊藤忠商事が投資を決めています。また数ヶ月前には丸紅とも戦略的パートナーシップを提携しています。

将来性があるからこそ、日本を代表する企業が投資を決めている訳です。

個性豊かで実力派な経営陣

この会社、経営陣も面白いんです。伊藤忠のニュースリリースには、「代表取締役CEO:流郷綾乃」と書いてあります。お、女性か。声優さん?偽名?
かなり気になりますね。更に調べてみると、1990年生まれ(同い年?!)、二児の母、暫定CEO、雑誌の取材で「新しいCEOにはいつでも交代できます」?
色々と面白い方の様です。しかも写真を見るととても美人の方です。

流郷CEOの写真や取材などはTwitterから沢山発信されているので、是非ご覧下さい。

もともと広報系のお仕事をされていた影響もあるのでしょう。
彼女はイエバエの専門家でもムスカのファウンダーでも有りませんが、会社として、若い女性の社長を広告塔とする戦略なのかと推察します(2019年4月23日に発表された人事で「暫定」の肩書きは外れています)。

実態的な経営者はファウンダー兼会長の串間充崇氏です。
彼こそが、ムスカの前進のアビオス、フィールズ時代からイエバエの事業を育ててきた張本人です。詳しくは、以下ご覧ください。

会社倒産の危機的な時期も乗り越え、今の拡大期を迎えるまで会社を支え続けてきた生粋のドM体質の経営者です。

更に、脇を固めるのは三井物産出身のCOOやゴールドマンサックス出身(と有りますが弁護士資格も持っています)のCFOです。

完全に福岡の一中小企業の経営陣のレベルでは有りません。この人事からもいかにムスカがこの事業に本気か、そして将来性が見込まれているかが伺えます。

一点だけ気になるのは、COOが三井物産出身にも関わらず、伊藤忠・丸紅が出資していて、三井物産が当社に出資していない理由は何故なのでしょうか。深い理由は無いのかもしれませんが個人的に気になります。

伊藤忠と丸紅の戦略は?

昨今商社は岐路に立たされています。
大きく世界がテクノロジーの進化で変化する中で、これまで主に力を入れていた重厚長大的な産業からのシフトを求められています。

また、世界の潮流としてSDGs(持続可能な社会を作りましょうという目標です)が注目されています。

銀行に勤める僕自身も、入行当時(2013年)には言葉自体知りませんでしたが、最近はSDGsに対する意識改革を肌で感じています。

SDGsに当てはまり、世界のアグリビジネスを変える大きな可能性を秘めたムスカは商社に取っても絶好の「種まき」の対象になったのだろうと思います。

伊藤忠も丸紅も戦略的パートナーシップを交わしたとしています。
即ち、持分法適用会社として商社の連結決算に含める対象とはなっておらず(よって出資額は20%以下)、まだまだ様子見の状況だと言うことです。

一方で、伊藤忠はムスカがこれから建設を始めるバイオマスプラントにも参画すると発表しています(伊藤忠のプレスリリース上は「参画を検討」との表現)。総額10億円程度のプロジェクトと言うことで、恐らくプロジェクトファイナンス仕立てで伊藤忠はスポンサーとしてこのプラント建設に参加することを考えているのでしょう。プロジェクトへの参画を見合いに新株予約権が伊藤忠に付与されると言うことなので、ムスカの将来を左右するこのプラント事業に参加し、成功した暁には、新株予約権を行使する腹づもりなのだと思います。

ちなみにムスカの目下の目標はナスダックに上場することだそうです。このプラント事業が軌道に乗ればきっとナスダックに上場することになるでしょう。そのタイミングで伊藤忠は保有株を市場に放出することでエクジットするのでしょう(東証に上場するまで保有し続けるかもしれませんね)。

まとめ

公開企業では無いので表面的な情報しか集められませんでしたが、将来性はとてもある会社なのだと思いました。個人的にも当社には是非投資してみたいなと思いました。

一方で課題もいくつかあるかと思います。

  • 彼らの肥料・飼料はマーケットの需要があるのか?
  • 対象マーケットは日本よりも海外の筈だが、福岡の一企業に海外人材が集まるのか(なのでナスダック上場を狙っているのでしょうが)?
  • 肥料・飼料以外の製品はあるのか?

とにもかくにも、この後控えているバイオマスプラント建設プロジェクトが社運を握っていることは間違いなさそうです。

次日本に帰る際は、是非福岡の会社見学に行ってみようと思います。

2019年、ハエ・テクノロジー企業のムスカがいよいよ孵化する《前編》